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「ゆっくりでいいから。アイツにちゃんと引き渡すのが俺の役目…。これからはアイツに守ってもらえよ?」
もうすぐ吊り橋を渡り終える。
私が来るのをじっと待ってくれてるのは、私の想い人。
佐伯主任……。
長かった吊り橋から地に足をつけると、イチにぃの手が離れた。
今にもイチにぃに掴みかかりそうな勢いの主任が、声を荒げた。
「いくらイチにぃでも許せねぇ!何のつもりだ!?」
「…人聞きわるいな、翔。ていうかお前、さっき堂々と『まひろ』って呼んだだろ?協定違反と受けとるが、いいのか」
「もうそんな"協定"なんて知るか!クソ食らえだ。………行こう」
私の手を取り、ズンズンと歩き出す主任。
何かを思い出したようにふと立ち止まり、イチにぃを振り返った。
「……有田さんは立派だった。早く安心させてやれよ、イチにぃ」
そしてまた歩き出す。
たどり着いたのは、山小屋らしき小ぢんまりとした可愛らしい建物。
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