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真央の兄も大学生だが、県外で正月以外は家に帰ってこないから大学のテスト期間がどういう様子なのかまるで見当がつかない。
「────ボートだけやっていられたら最高なんだけど、学生だからね。真央ちゃんは高2って言ってたよね。将来は進学? 大学でもボート続ける?」
「えー大学ですか? 勉強あんまり好きじゃないしなぁ・・・。ボートは好きだけど・・・うーん、大学いってまでって考えた事ないです」
「もったいないよ、県大会出るだけの力あるのに」
「たまたまですよ。高校まででいいかなって・・」
「ふーん、もったいない」
「大学は頭がついていけなさそうだから就職の予定でいます。うち、兄がまだ大学生で妹が来年高校だし、無理に進学して親に苦労かけるのもなぁ、なんて」
「てことは俺より先に社会人になっちゃうわけだ」
「え?」
上村の言葉の意味が理解できなくて真央は首を傾げた。
「俺今二年生だし、真央ちゃんが高卒で就職するなら先越されるんだなぁって・・・」
「二年生って事は上村さん、私より三つ上なんですね。もっと年上なのかと思ってました。そうか・・・お兄ちゃんと同い年なんだ」
兄と同じ年という事が分かって真央はぐっと親近感が湧いてきた。
「やっぱり背が大きいと大人に見えますよね」
真央の兄の身長は170半ば位の高さなので、比べると上村の方が随分年上に見える。
「だろう? だからまだ二十歳になっていないんだけど居酒屋でバイトしてる。暫定成人てことで・・・」
「うわぁ・・いけないんだ」
話しながら二人は艇庫から離れた東屋の方に歩いて行く。途中上村が、プレゼントのお礼と言って自動販売機で買ったジュースを真央に手渡した。
「女の子だともっとお洒落な店に誘わなくちゃいけないんだろうけど、俺こんな格好だしさ」
照れ臭そうにTシャツを引っ張る上村に、真央は自分こそと見上げた。
「私も・・・練習着のままだし、汗臭いし、潟の水の臭いがするでしょう。でもこのままよく帰りにバーガーショップに寄ったりしてますよ」
「わぁ・・そうなんだ」
「妹が女子高に通ってて、よくダメ出しされます」
「妹もいるんだ。真央ちゃんは」
「はい、三人兄妹です。上村さんは?」
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