第1章

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教室の戸を開けるとそこには、土下座する男を腕組みして見下ろすママがいた。 「……えっ!?」 私の声に反射的に男がこっちを見た。目が合った瞬間私は戸を閉めた。 「……!?何なの……あの男は誰?先生じゃないし……。」 私はパニック寸前。 教室から男の声が聞こえて来た。 「本当にすまなかった。出来る限り責任をとるよ!だから17年前の事は秘密にしてくれ、頼む!!」 「17年前って……!?もしかしてアイツが私のパパ~!?」 頭がクラクラしてきた。 ガラッ! 戸が開いてママが出てきた。 「明希、帰るよ。」 「待ってよママ~!!」 駆け寄ってママの腕を掴んだ。 「ママ、どうして学校にいるの!?あの男は誰よ!!」 「授業料が口座から落ちなかったから支払いに来たのよ。アイツはこの学校の事務長……で、昔の男。」 「事務長…昔の男って事は私のパパ?」 「え~!違う違う!!パパじゃないから~。」 「だって、さっき責任とるって……」 「アイツが思い込んでいるだけよ。アイツは大学のサークルの先輩で一年くらい付き合って……生理が遅れて、『妊娠したかも……。』って言ったら突然留学してそれっきり……。」 「最低な奴!」 「ホント、最低だよね。結局妊娠はしていなかった……。」 「そうなんだ……。じゃあ、私のパパは誰なの?」 「明希のパパはアイツの親友……失恋したママを支えてくれた人。。。今度は本当に妊娠して……結局明希のパパも逃げちゃった。で、シングルマザーってわけ。」 衝撃的過ぎて絶句!! 「ゴメンネ……。今まで話さなくて。男運の悪さに情けなくなって、もう男は懲り懲り……そう思ったから赤ちゃんを産む決心したの。生まれたあなたを見て、これからは二人で明るく希望を持って生きよう!って思ったの。だからあなたを明希(アキ)って名付けたのよ。」 「ママ~……。」 「よしよし。ホラッ、泣かないの……。さっ、何か美味しい物を食べに行こう!」 ママと腕を組んで歩きながら、さっきの光景を思い出していた。 窓から差し込む西陽がママのシルエットを赤く染めて、それはまるで『赤鬼』の様に見えた……。 でも、この事はママには言わないでおこぉーッと! END
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