8人が本棚に入れています
本棚に追加
四年前にこの祭りに一緒に来た時は、私はこの浴衣。彼はジーパンに洗いざらしの白いティシャツだったわ。「なによ~。 もう。お祭りらしい格好してきなよ~」なんて言ったけど、彼らしく清潔感があってドキドキしたなぁ。
実はこの祭りに来るのはあの時以来なの。彼の事を思い出しそうで怖かったから。やっぱり今も彼の事を思い出してるけど、悲しくない。いい思い出になったのかな。
四年前と同じ店を歩いて見る。金魚すくい…… 綿菓子…… たこやき…… 、そして輪投げ。再び輪投げの所に来て商品を見てみると、『くまのキーホルダー』があった! あの時と同じ物だわ。
私は百円を払って五回投げた。かすりもしなかった。なぜか意地になってもう百円払った。
私が投げた時、横の人が同時に投げた。私の輪っかははずれ。なんと横の人が投げた輪っかが『くまのキーホルダー』に入った。
「あっ!」
私はおもわず声を上げていた。だって私が欲しかったんだもの。
悔しくて横の人を睨んでやろうと顔を向けた。
「あっ!」
そこには祐二がいた。
「相変わらず、下手だね」
祐二は爽やかに笑って『くまのキーホルダー』を手渡した。
「どうして?どうしてここにいるの?」
「逢いに来た」
祐二は笑みを絶やさないで言う。
「取り敢えず、少し歩かないか」
祐二は私の手を引いて歩きだした。あのころと変わらない大きな手、格好もジーパンに白いティシャツだ。ちっとも変ってないのね、あなたは。
私達は祭の広場の端っこにある休憩用のベンチに腰掛けた。
最初のコメントを投稿しよう!