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俺が先生を何か気にするようになったのってなんだったっけ。
「なぁー、幸ー。」
「あ?なんだよ。銀次。」
ああ、あれだ。
補習の時、先生が本気でくるなら受け入れてやるとか何とか訳のわかんねえ事言い出したからだ。
「お前さー………、いや、何でもねえ。」
「なんだよ。やめんなよ。気になんだろ。」
あの頃の俺は、身に覚えのない噂に腹を立てていて。ちょっと荒んでいた。
「うーん…………。キレんなよ?」
「は?意味わかんねえんだけど。」
でも、先生が俺はそんなんじゃねえって。信じてくれたから。本人には言ってねえけど、実は救われていた。
「俺は聞いただけだからな。………あのな、お前の新しい噂。………まじで、怒るなよ?」
「…………………また、何かあんのかよ。」
だから。
自分のせいで、先生に迷惑かけるなんて我慢ならなかった。そんなつもりもなかった。
「…………『山口 幸は、担任の今井先生に体で追試を勘弁してもらってる』」
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