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「う、噂……っ!ほら、前にも言っただろ、俺の身に覚えのない噂っ、」
「あ?噂?………ああ、あれか。それが何だ。」
「…………あれとは違う、別の噂が流れてんだよ。」
「どんな。」
「………………。」
だよなぁ、そうくるよなぁ。
ーーーーーくそっ、何が悲しくて、こんな事自分で言わなきゃなんねぇんだよっ!
「山口、」
「ーーー俺がっ!…………今井先生に体で追試勘弁してもらってるって………、」
「………………………、」
勢いで言っちまおうと思ってたのに、最後の方は何でか弱弱しい声になってしまった。
…………ちくしょう、何か言えよ。
俺はまだ先生に頭を押さえられてる状態だから、今のを聞いて先生がどう思ったか、どんな表情なのか分からない。
この沈黙が、何か嫌だ。どうしていいか分かんねえ。
「…………………は、バーカ。」
「へ、ーーーちょっ、やめっ!」
突然、鼻で笑ったかと思ったら。頭を押さえていた手を動かして、髪の毛をグシャグシャにされた。
「アホか。そんな噂、相手にすんな。反応したら、流したやつの思うツボなんだよっ。わかったか!」
「わかった!わかったから、もう髪の毛グチャグチャにすんなっ!」
これでも一応セットしてんだよっ!俺の毎朝の努力無駄にするなよ!
「…………………迷惑だなんて思ってねえから。ほら、問題解け。」
「ーーーーーーっ、」
やっと、頭を解放してもらえて前を向いたら。
ちょ…………っ、なんだよ。なんでそんな優しい顔で俺見てんだよ………っ。
ーーーーーードキンっ、
え?
なんだ?
今の。
「……………………解け。」
「…………はい。」
うそだ。
今のは、嘘に決まってる。
気のせいだ。
きっと。
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