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それに千代はもう一つミスを犯している。
「"あなたは見えていない"」
「なっ!?"嘉穂"かっ!!!!!!」
私は一人で戦っている訳じゃないんだ。千代が飛ばされた先で嘉穂さんが放った甲(きのえ)の力で千代の足を複数の木が拘束している。
そうでもしないと遠距離から射る意味がないじゃない。
「ぐぅぅぅ!くそっ!」
千代はもがくが嘉穂さんとて陰陽師だ。力をまともに発動出来ない千代に易々と解けるはずもない。
しかし、観念したのかと千代はもがくのを止めるが、半分に折れた剣を"半分しかない鉄扇"に戻す。
「ふんっ!じゃが所詮、焔よ。"怖くは無い"」
千代は手にした扇子を一凪、大きく横一線に振る。すると、鉄扇からは豪風が吹き荒れ、私の放った炎の矢にぶつかる。
「そんなことをしても無駄よ。生半可な風じゃ私の炎は"消せない"」
「だまれ小娘が!それに"考え違い"をしているのは主じゃ」
千代は意味深に笑みを溢す。そして、その原因は千代の放った攻撃にあった。千代が起こしたものは単なる風じゃなかった。
よく見ると、無数の"水渋き"が風の中で暴れまわっていた。
「くっくっく。癸(みずのと)じゃ。焔は水で消せばよい」
あぁ……千代はやはり勘違いしている。
「なら"私の勝ちね"」
「なにをーー!?!?」
私の放った矢が千代の胸を貫いた。
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