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そんなことより、これからの事を考えよう。私は隣で集中している源の顔を覗き込むと、源は大きく息を吐き言う。
「おかげで時間を短縮できたよ。"今から千代の意識を俺に移す"」
千代の意識を……移す?
源は確かにそう呟いた。
何のことかわからず考え込む私を前にしても、手を休ませるような事はせず、千代の身体の周囲に呪符を配置し、陰陽の入り混じった防呪符で包み込んでいく。
そして、新しい呪附を千代の額へとそっと押し当てると呪符が独りでに宙に浮いた。
「……始める前に説明して。"消す"んじゃないのね?」
「あぁ、千代の術は結の身体に印……つまり、スキルエンドで言うスキルマークを体中に刻むことで初めて発動する。体の成熟と共にその印も成長し、全てが完成した頃に術が発動する」
「ええ……それが"千代の記憶だ"って言ってたわね?」
「そうだ、千代は実際に肉体を持っていない。だから、結の身体に印が刻まれている限り何度でも"蘇えれる"んだ」
蘇える…ね。その言葉が適切なのかは疑問だけど、源の言葉を今は信じるしかない。
整理するに結さんの身体には印が刻まれている。そして、源の言い分じゃ、それは消せるような代物じゃない。
そこは理解した。
じゃあ、千代の意識が何なのか……ってとこか。
「時間がないところ申し訳ないんだけど、"千代の意識"ってなに?」
わからないことを考えても解は出ない。私はストレートに質問を投げかける事にした。源はその質問にも律儀に応えてくれる。
「簡単だよ、反魂の術ってのは、魂を反転させるってことだ。表のコインである結を裏のコインである千代にな。んで、その魂って奴はスキルエンドも持ってるじゃねぇか?」
「スキルエンドに受け継がれる細胞?」
「あぁ、レベルは段違いだが"細胞記憶"ってやつだよ。今までは仮説に過ぎなかったが、スキルエンドの細胞には一つ一つに先祖の記憶が含まれてる。それを立証した奴こそ"進藤月歩"だ」
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