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そんな様子から見ても源の過去で瀬十郎が言った"ある術者の手助け"っての月歩の事で間違いないらしい。
「わかりやすいやつだ」
「……はんっ!最早小さきことよ。邪法により生まれたあの悪鬼は、安倍清明とは程遠い」
「言ってろ。その悪鬼に殺されるのはお前だよ」
「何をーー?」
そこまで言って気付く。
冷静な態度とは裏腹に内心では相当焦っていたのか、直ぐに表情に出てしまう瀬十郎を見ていると俺が思っていた以上に余裕がない様子だ。
兎に角、やっと瀬十郎は漸く千代の異変に気付く。確かに俺と瀬十郎の位置からじゃ遠くて見辛いが、ぐったりと横たわる結に源が"何かの術を施していた"事は、視界に入れれば当然直ぐに気付けたはずだ。
瀬十郎はその後も無言でその様を静観するが、急に顔色を変えると、俺の事なんか忘れたとでも言いたいのか無言のまま源の傍まで走り始めた。
だからってすんなりと行かせてやるつもりはない。俺は風の力で一気にその距離を縮め源と瀬十郎の間に回り込み行く手を阻む。
「くっ!小僧!そこをどけっ!!」
「嫌だね」
「くっ!らっーー!?!?」
「ーー見飽きたよ」
瀬十郎は懐から呪符を取り出そうとするが俺はその腕を掴み静止する。過去、源にされたにも関わらず同じ轍を踏むのか?陰陽師の最大の弱点は、呪符がないと何もできない事だ。
「くぅっ!離せ!離さんかっ!!!」
瀬十郎はまるで子供のように喚き散らす。これなら"賀茂を襲撃したスキルエンド"の方が何倍もマシだ。
"それまでにこの瀬十郎は弱い"。
「寝てろよ?」
「なっーー」
俺は風を纏った拳を瀬十郎の腹部に減り込ませた。勘九郎の事を考えるとあまり傷つけたくない。
でも、今の瀬十郎にはこれで十分だった。たったこれだけの事で大した抵抗も出来ないまま、その意識を刈り取ることができたんだ。
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