第24話

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「まぁ、駄々捏ねたってどうしようもないのもわかってるっての」 俺はそんな捨て台詞にも似た愚痴を零しつつ源の指示通り一歩下がり、灯の隣で地面に腰掛けた。 そして、何か言いたいのか微妙な崩れた笑顔と乾いた笑い声をあげると、視線を勘九郎に落とし、再び謎の呪文を唱え始めた。 「なぁ、灯」 「何?」 「難しいことはわかんねぇからいいんだけど、あれは"大丈夫なんだな?"」 気になる物は気になる。 だって、"化物"を退治しようってんのに、源が言うほど簡単じゃ無い事くらいわかる。 それなりに"リスク"があるはずだ。 「……私は隠す気が無いから言うけど、"源は千代の意識を自分の中に取り込んでいる"のよ」 意識を取り込む……? 「それってスキルエンドと同じになるってことか?」 「どういう結果になるかはわからない。源は印を体に持たない自分には影響ないと言っていたけれど、自分の脳に他人の記憶を居すわらせる事になる以上、何かしらの不具合が起きる可能性が高いと思う」 「ちょっ!それやばいんじゃねーのかよ!?!?」 「……でしょうね。記憶屋を共有する記憶の混同に近いのかもしれない。 でもだからって、葉真にそれを止めることが出来る?源のやり方については、私も擁護する気はないけど、彼は彼の人生を掛けて瀬十郎と千代に復讐すると決めたのよ。それも見方を変えれば"勘九郎と結を助ける"という事実でね」 「わ、わかるけどーー」 「ーーわかってないわ。恐らく、瀬十郎と千代を倒す最も合理的な方法は、その血筋を絶つこと。そして、それは安倍と賀茂の世継ぎがいない今が絶好のチャンスなのよ」 それってつまり…… 「勘九郎と千代を殺すってことか?」 「えぇ。でも今、源の行動はそれを防ぐために別の手立てを行使している。それでも止めたいのなら陰陽師当主を殺す覚悟で止めなさい」 静かな口調でそう言うけど……灯は俺に源を止める事なんて出来ないってわかってて言ってんだ。勿論、灯だってほんとは源を止めたいんだと思うよ。 言葉の節々からそれを感じる。源が選んだ道ってのを信じる選択を灯はしたんだ。 なら、俺もそうするしかねーのか? 「また……か」 結局何もできない。 俺は歯がゆい気持ちを抱きつつ、降ろした腰を上げることはなかった。
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