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『あった、あった、僕の首』
嬉しさで、弾んで、教室へと足を踏み入れた。
だが、僕の首の隣に、もう一つ真新しい首があった。
肌は、真っ白で綺麗だ。
僕は、もうこの学校で何十年と使われていたから、頬なんか沢山の手垢で汚され、日に焼けて、年季がはいって黄ばんでた。
だがこの真新しい首は、肌が滑らかで、何より頬のチークの入り方や、小鼻の形なんかが、整いすぎてなくて、人間らしくていい。
『新しいのがいいな。今日からこっちにしよう』
僕は迷わず新しい首を掴んだ。
首は、固い机に一体化したように張り付いていて、持ち上げたがびくともしない。
つるりとした顎の下をしっかりと掴み、引っ張ると、口がかぱりと開き、目だまが大きく飛び出しそうになった。
触れる質感はゴムボールのようにつるっとしていて柔らかい。
おまけに、ぎゃあという音声まで出る。
凄くリアルだ。
ぞくぞくとした快感を感じながら、渾身の力で首を引っ張った。
黒い液体を垂れ流す首は、ミチミチと腱を引きちぎるような音を起てて、机から剥がれ落ちた。
ねっとりとした汁にまみれた顔を、こちらへと向けると、眼球が意思を持つように、ぐるんと僕のほうへと向いた。
少々汚らしくなってしまったが、洗えば、元通りになるだろう。
いいものを見つけた。
とても清々しい気分で、僕は、新しい頭を抱きかかえて、3-B教室の戸を開けた。
(深夜0時の3-B教室(完))
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