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悪戯に気づいた僕に、山田は、「じゃじゃーん!」と、ドッキリを告げに何処からか出てくることを期待したが、現れる様子は一向に訪れなかった。
教室の中は、干からびかけた蝉の声が、ぴっちりと閉じられた硝子窓の外から微かに届くだけで、誰の気配もない。
普段あるはずのクラスメイトのくだらないおしゃべりの声も、机の上で揺れるスマホのバイブ音も、椅子や机の軋んだ鈍い金属音もしない。
そんな日中通う教室は、普段の猥雑さが、一切消え去っていて、何処か神聖で、神秘的な雰囲気に満ちていた。
だが、山田は、深夜の教室で生首と遭遇し、僕が恐怖する様子を、コッソリ隠れ見てほくそ笑んでいるのだろう。
ひひひ、ふふふ、ぐへへ。
きっとゲラゲラ笑い転げたいのを必死に抑え込んでいるに違いない。
狭くて暗くい場所で。おい、山田。一体どこで笑ってる?
一体どこにいる?
教室の何処に隠れて僕を見ているんだ?
電気系統は一括で管理されているのか、教室の電気は点かなかった。仕方なしに暗がりの中で目を凝らして、教室の中に潜む山田を探す。
教卓の下や、先生の机の裏側なんかは怪しいとおもったが、見つけたのは、シャーペンの芯を刺した穴だらけの、小さな消しゴム一つだけだった。
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