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上階で、大きな音がした。
探し物をしている最中だった僕は、もしやと思い階段を目指す。
裸足の足につっかけた来賓用の水色のスリッパは、歩きにくくて、階段を登る度にパタパタと音を響かせた。
流石に、3階まで一気に階段を上ると、息切れを起こし、くたびれてしまった。
階段の踊り場にある壁掛け時計は、0時丁度を差している。
『もうこんな時間か』
男子トイレの前にある、水飲み場の水垢でくすんだ姿見に、僕の姿だけが映っている。
いつもここを通ると、天窓から注がれる光が僕の体に注がれて、眩しくてたまらないのだが、今夜は、月がこの場を占拠していなかった。
重なり合う雲に隠れている青白い月の姿を思い浮かべながら、呼吸を整えるように、物音がした教室までじっくり進むことにした。
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