反芻と逡巡の日常

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 さて、どうしたものか。陽光が柔らかく差し込んでくる。眠気を誘発する淡い明りにまどろみながら、泰然とそんなことを思惟していると、死角から背中を小突かれる。この光景も変わらずか。僕は辟易しながらも悪友へと振り返る。  やはり、というべきかトモキは屈託のない笑顔を憮然とした表情の僕に振りまいていた。「よう、元気かい万年低血圧人間くん」  この台詞ももう何度目か。僕は深く嘆息し、トモキの顔をまじまじと見つめた。スラリと立った目鼻だちと切れ長の瞳、完成された容姿に反する人懐こい性格――ギャップと言うそうだ――を併せ持った彼は、男の僕から見ても見栄えがする。  入学式直後に敢行される二泊三日の体験合宿で同じ班になったのが運の尽き。以来、僕の記憶には、彼との無為な思い出が刷り込まれている。トモキは色恋の類にはまったくと言って良いほど無頓着で、おかげでいつも付きまとわれる僕は、否応にも自身の容姿と彼とを比較し鬱屈たる思いに駆られてしまう。
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