反芻と逡巡の日常

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 彼には分かるだろうか。一緒にいるというだけの理由から、トモキを狙っている女子連中に人知れず目くじらを立てられる僕の気持ちが。僕にだって懇意にしたい女性の一人や二人いるというのに、これでは近付くことすらままならないのだ。  と、まあそんな歯がゆさもあって、僕はトモキの頭をぽかりと叩き付ける。トモキはくしゃりと破顔してようやく話題を提供する。これが朝の慣例だった。  僕の不機嫌な素振りは、今はあまり干渉しないでおくれというサインでもあったわけだけれど、どうにもトモキにはそういった機微がうまく伝わらない。 「悪いけど、いまは……」  ここまで言いかけて言葉を切る。どうせ、言っても聞かないことは知っている。「いや、なんでもない」  トモキは一瞬、不思議そうな顔をしたが、これ幸いと滑らかに喋り始めた。 「見たかよ、昨日のニュース。いくら地震大国日本とは言ってもよ、限度ってもんがあるぜ」  トモキが言っているのは、連日ニュースで取り沙汰されている列島各地を襲っている地震のことだ。局地的にではなく、全国的にここ数週間、地震が頻発しているのだった。
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