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でも結局、妙案は浮かばないまま、そのときは来た。轟音とともに激しい揺れが室内を襲う。鉄骨が軋みミチミチと危険な音階を奏で始める。
一箇所であがった生徒の悲鳴が、教室全体に伝播していく。容赦ない揺れは、立ち上がることすら許さず、僕はなすがまま床に突っ伏す。
がしゃがしゃと机椅子が縦横無尽に室内を行き交い、悄然とする女生徒の後頭部に命中した。赤い血がたれていた。
屈強な男子生徒は上を下への騒ぎの最中、廊下へ無謀な逃亡をはかる。変形した壁面の衝撃に耐えられず粉砕したガラスの破片が無色の散弾となり、彼らを傷つけた。
見るに耐えない光景を僕は呆然と眺め、ゆっくりと目を閉じた。めきめきと断末魔の叫びのような物音を立て、コンクリートの天井が崩壊した。暗転、静寂。
……ぱちりと目を開ける。目の前には、無機質な戸が悠然と構えてある。はあ、また始まるのか。僕は嘆息し、そして手をかけた。いったい、どうすれば良いというのだ。
教室の戸を開けたら、そこにはもう何百、何千と繰り返し見てきた日常の風景がある。寸分も違わぬ、変わり映えのしない日常が……。
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