第3話 七つ詣で

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「ねぇねぇ、遥人も天神さまに行くの?」  休み時間になるとクラスメイトたちが「七つ詣で」をするのかどうかを尋ねてきた。 「わかんない。お母さん、忙しいし」  遥人の両親は離婚していて、今は母親と二人暮らしだ。  この小さな村で、それを知らない者はなかった。  父はその目を気にしてなのか、しばらくすると村から出て行き、以来、遥人とはたまに電話をするだけの関係になっている。  養育費をもらっているのか遥人は知らないが、母は遥人に不憫(ふびん)な思いをさせないために必死で働いている。  本当に忙しそうにしているのだ。それを遥人はわかっているので、母親に無理はいえない。  自分から頼むつもりはなかった。  でも、ごまかしているように聞こえたのか、ひとりの男子児童がからかってきた。 「怖いんだろ? おれなんか1時間もひとりでいたんだぞ」  自慢げにいうので、遥人もつい大きな声で怖くなんかないといった。 「ひとりでだって行けるくらいだよ」 「うそだね。ぜったい無理だよ」 「平気だもん」  大口を叩いてしまった手前、行かなければ格好がつかなくなった。  いったん自宅に戻ると「てんじんさまに ななつもうでにいってくるので むかえにきて」と母親に書き置きを残して出かけた。  途中、1時間もお社に籠もっていたという同級生に出くわして、これから七つ詣でに行くことを伝えた。  まだ疑っていたが、お社は村の外れにあるので、同級生もわざわざついてきて確認するようなことはなかった。
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