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「ねぇねぇ、遥人も天神さまに行くの?」
休み時間になるとクラスメイトたちが「七つ詣で」をするのかどうかを尋ねてきた。
「わかんない。お母さん、忙しいし」
遥人の両親は離婚していて、今は母親と二人暮らしだ。
この小さな村で、それを知らない者はなかった。
父はその目を気にしてなのか、しばらくすると村から出て行き、以来、遥人とはたまに電話をするだけの関係になっている。
養育費をもらっているのか遥人は知らないが、母は遥人に不憫な思いをさせないために必死で働いている。
本当に忙しそうにしているのだ。それを遥人はわかっているので、母親に無理はいえない。
自分から頼むつもりはなかった。
でも、ごまかしているように聞こえたのか、ひとりの男子児童がからかってきた。
「怖いんだろ? おれなんか1時間もひとりでいたんだぞ」
自慢げにいうので、遥人もつい大きな声で怖くなんかないといった。
「ひとりでだって行けるくらいだよ」
「うそだね。ぜったい無理だよ」
「平気だもん」
大口を叩いてしまった手前、行かなければ格好がつかなくなった。
いったん自宅に戻ると「てんじんさまに ななつもうでにいってくるので むかえにきて」と母親に書き置きを残して出かけた。
途中、1時間もお社に籠もっていたという同級生に出くわして、これから七つ詣でに行くことを伝えた。
まだ疑っていたが、お社は村の外れにあるので、同級生もわざわざついてきて確認するようなことはなかった。
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