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第4話 仲間に入れてとあなたはいう
学生時代の友人と昔話に花を咲かせるのは実に楽しいことだろう。
しかし、思い出とは楽しいことばかりであろうか。
※
学校から帰る途中、由羽は駅でばったりと中学校の友達と再会した。
ふしぎなことに、話しこんでいると見知った顔が次々と通りかかり、気がつくと五人の旧友たちが輪になって中学生時代の思い出話しでもりあがっていた。
「ねぇ、これから中学校に行ってみない?」
と、だれかがいいだした。
旧校舎がいよいよ取り壊されるらしいのだ。
彼女たちが通っていたころは、通常の授業を受ける教室は、彼女たちが入学するよりずっと前に鉄筋の新しい校舎が建築されたのだが、旧校舎はそのまま職員室や特別教室として利用されていた。
そのほとんどの教室は使われていなかったが、廊下を走ると窓ガラスがカタカタと揺れるような木造の平屋で、かなり傷んでいた。
彼女たちが卒業した年にはもう、建て替えのプランが上がっていたのだった。
「取り壊される前に写真とっておこうよ」
誰かがいって、おもしろ半分の気持ちで彼女たちは自転車で中学校へ向かった。
到着するころにはあたりは暗くなっていて、誰かがいる気配はまったくしなかった。
正面の門は固く閉ざされているが、勝手知ったる母校だ。
脇から簡単に入れる場所を彼女たちは知っていた。
自転車を止めて侵入すると、より一層ひっそりとした空間が待ち受けていた。
三年間通った馴染みある場所なのに、なぜだか隣にいる友人の手を握りしめたくなるくらい静けさが怖かった。
旧校舎はほの暗い。
職員玄関の前に立っている外灯だけがぽつんと周囲を照らしていた。
校舎に近づいて窓からのぞいてみるが、やはりだれもいない。
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