26人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
「怒られるといけないから早く撮ろう」
直美はそういってスマホを取り出した。
「このへんでいいかな」
彼女たちは顔をよせ合って自撮りした。
「どんなかんじ?」
由羽が聞くと、直美は画面を見せた。
「なんかフラッシュで顔テカりすぎ」
紗菜がそういって笑うと、千恵は画面を指さした。
「いや、そんなことより、これ」
「え? 窓になんかうつってる?」
「ちょっと、直美! へんなアプリ仕込んだでしょ」
責め立てられた直美はそんなわけないじゃんと否定する。
「じゃあ、由羽ちゃんのスマホでとろうよ」
由羽も自分のスマホを取り出して同じように撮影した。
「ちょっと、普通すぎ」
「なんでがっかりされるのよ」
「ねぇ、今度はわたし。自撮り棒あるし」
紗菜もスマホを取り出して、長い棒の先にスマホを取り付けて撮影した。
そして、千恵は人の顔が血みどろになるアプリで撮影したり、写真を交換したり、一通り撮影会が終わったときだ。
一瞬、なにかが通りかかったようにシンと静まりかえった。
「……そろそろ帰ろうよ」
直美がいうと、ほかの4人は同意した。
ひとけのない静かすぎる学校は、思いのほか居心地が悪く、暗い空間を凝視していると、なにものかが出てきそうで怖かった。
スマホをバッグにしまっていると、小さな声がどこかから聞こえてきた。
『ねぇ、わたし、まだとってないよ……』
彼女たちは思わず顔を見合わせた。
「え? なに?」
「遠くの声が響いてるんじゃない?」
「やだ、早く帰ろ」
彼女たちはだれにも後れを取りたくなくて、横一列になってかけだしていた。
最初のコメントを投稿しよう!