26人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
その晩のことだ。
紗菜から4人にメールがきた。
自分がとった写真を拡大してみんなの瞳に写っているものをよく確認してみてほしいとあった。
どういうことだろうかと、紗菜が撮影した写真を拡大してみた。
すると、みんなの黒い瞳にはなにかの影が写っていた。
それが人影だとわかったとき、由羽はゾクリとした。
自撮り棒で撮ったはずなのに、自分たちの目にだれかが写っているなんてことがあるわけない。
瞳に写っていたのは肩まで髪が伸びた、セーラー服姿の少女。
母校の制服を着た少女だ。
少女の顔はよくわからない。
少女は古めかしいカメラを右目に当て、左目をつむってシャッターをきるようなポーズをとっていた。
制服のデザインは何十年と変わらないと聞いている。
学校にいついている幽霊だろうか。
すごく昔になにかあったのかもしれない。
「だけど、この子って……」
紗菜もそれに気がついたんじゃないだろうか。
あの子に似ている。
教室でいつもぽつんとしていた戸田さん。
なにをやるのもひとりぼっちで、無視され続け、だれも仲間に入れてあげようとはしなかった。
今は遠くの高校に通っているときいている。
由羽たちには無関係の幽霊かもしれない。
だけど、ちょっとした罪悪感が、仲間はずれのあの子を思い起こさせたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!