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「え? なにいってるの。生きてるでしょ」
青年は冗談でしょといわんばかりに笑っている。
「わたしは覚えてます。あなたに殺されたんです。あなたに殺されるくらいなら、いっそのこと車にひかれてしまったほうがよかったくらいです。化けて出るどころか、再びこの世に戻って参りました」
「は? いい加減にしろよ」
青年は急に野太い声になり、ナイフを振り上げたときと同じようなするどい目つきで友梨亜をにらんだ。
「どうしてなの……あんなにやさしくしてくれたのに……。ねぇ、忘れたわけじゃないでしょ。わたしは、あなたに殺されたいつぞやの猫よ! パンや牛乳をくれたでしょ。なんで急にあんなこと」
「ふざけるな!」
青年は立ち上がると友梨亜を突き飛ばした。
あまりの力の強さに、友梨亜は後ろにひっくり返ってしまった。
腰を強く打ち付けて、すぐには立ち上がれない。
「猫だって? なんで知ってる。っていうか、なんでそんな気味の悪いいいかたするんだよ」
「わたしは生まれ変わりです。前世は猫でした」
「ふっ」
ちっとも信じてないように青年は鼻で笑った。
いつだって、誰も信じてはくれなかった。
だけど、友梨亜は本当に前世は猫だった。
生まれたときは親も、兄弟も一緒にいたような気がするのだけど、気づいたらひとりぼっちだった。
初めて動物に生まれ変わった友梨亜は、猫の習性になれることができなかった。
そうしてようやくできた友達というのがニヤケだったのだ。
そのニヤケは門の上にのぼり、ちょこんと座ってこちらの様子をうかがっている。
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