第7話 写真館にいつく誰か

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 秋良も唐突にそんなことを感じた。  どこかで見たことのある顔だ。  駅へと向かう道すがら、毎日それを目にしているからそう思うだけだろうか。  昔からある地元のその写真館には、そこで撮影された写真が店頭にいくつも貼ってある。  七五三や成人の日、仲むつまじく寄り添っている家族の写真など、幸福に満ちた特別な記念日の一瞬を惜しげもなくさらしていた。  七五三で撮ったと思われるその写真は色あせ、着物や髪型もちょっと古くさい。今時の女の子が好む衣装には見えなかった。  ずいぶんと前に撮影されたものだろう。  それだけ古ければここを通る際に何度も見ているはずだった。  既視感だといえば、そうだともいえる。  ただ、違う写真に写っている人物にはあまりピンとこないので、この女の子とは知らず知らずのうちに、どこかですれ違っている、なんてこともあるかもしれない。  個人が経営している小さな写真屋さんだ。  たくさんの衣装が置いてある大手チェーン店なら、全国から選りすぐった写真を目立つところに貼りだしていることがあるかもしれないが、その写真館へ撮影にやってくるのは近くに住んでいる人たちばかりだろう。  実際、写真に写っている人物と顔を合わせたことがあっても不思議はないのだ。  写真の女の子は案外自分と同じくらいに成長していたりして。  自分ももうすぐ二十歳だが、さすがにここで成人の日の撮影なんてしないかな、とか勝手な想像をしたりもした。
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