第12話 ホンモノに出会ってしまった話し

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 大学生になってから初めて占い師に対面して見てもらった。  友人とランチを終え、ふらふらと歩いていたら占い師がいる喫茶店を見つけたのだ。  おしゃれで入りやすそうな店構えだったし、最悪、コーヒーだけ飲んで帰ればいいとも思っていた。  占うスペースは店の奥にある、籐で出来たパテーションの向こう側であった。  客はまばらにいて、完全な個室ではないのも安心感を覚えた。  注文を取りに来たウェイトレスに占ってもらいたいことを告げると、先生を呼んでくるのでパテーションの裏で待っているように言われた。  友人をテーブルに待たせ、亜矢はひとりで占ってもらった。  当たっているとか当たっていないとかそんなことより、亜矢はその占い師にとてもいい印象を持った。  これなら占いも怖くない。  もっといろんな人に見てもらいたいと思うようになった。  ネットで占い師の評判を調べ、完全に自分自身のインスピレーションで占い師の店をいくつも回っていった。  通りに面した軒下のような場所だとか、占い師が何人も常駐しているまさに占いの館みたいなところもある。  タロットに水晶、手相、姓名判断、口寄せ、大きなインコが登場したり、小豆のようなマメをかき混ぜたり、占い方はそれこそ千差万別なのだが、通い詰めてみると、どういうわけかみんないっていることが同じような気がしてきた。  多数の人に向けて書かれた雑誌やアプリよりも、亜矢ひとりに向けて丁寧に占った方がボキャブラリーに変化がないのである。
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