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だから亜矢は変な気を起こして自分を偽ってみようと思ってしまったのだった。
何軒も回っているので覚えてない店もあるが、一番はじめに占ってもらった喫茶店の占い師のところへやってきた。
前髪を切りそろえた長い髪の女性を見て、そうだ、この人だったと亜矢の方は覚えていた。
占い師は一瞥しただけでこれといってなにもいわなかった。
「今日はなにを?」
と、初回とも2回目ともとれる尋ね方をした。
「仕事のことで……」
学生だけど亜矢は勤め人のふりをして適当に話しを進めた。
占い師はタロットをかき混ぜて相づちを打ちながらテーブルに並べていく。
「大きなことを任されているのね」
見当違いなことをいっても、亜矢はいちいち驚き、その通りだ、どうしてわかるの、そんなことをいって話をあわせた。
でたらめな占いに金を払おうとしている自分は、気でもふれているかと自嘲したくなった。
占いにハマりすぎた自分がおかしな方向へ進もうとも、占い師にそれを指摘されるはずもない。
いいカモなのだから。
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