第14話 水辺の男の子

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第14話 水辺の男の子

 まったく、防波堤で五十メートル走をしようだなんて誰が言い出したんだか。  よーいドンでふたりが好き勝手に走り出し、ビーチサンダルのペタペタとかかとを打ち付ける音が闇に溶け込んでいくように遠のいていく。  ――バイトのない日くらい寝て過ごしたかったのに。 「海に行こうぜ」と誘われれば「ライフセイバーのバイトで毎日行ってる」としらけたことも言い出せなかった。  なんたって女っ気のない集まりだ。  ナンパをやりそうな猛者もいない。ひと夏の恋どころかワンナイト、いや昼飯のご相伴だけでもありえない。  それでもなにか大学生っぽいことをしておかねば夏を終われないという子供じみた理屈は共感をよんだらしい。  SNSに青春の日々をアップロードするため、がら空きの予定を埋める集いと化していたのであった。  大学近くに海水浴場があるというのに、このトップシーズンに空きがある民宿に泊まるため、わざわざ遠出をすることとなった。  だが、そこは実家から日帰りでいけるくらい近いところで、小さいころは家族でよくこの海水浴場へ来たものだった。  そうして民宿らしい質素な食事でお腹を満たし、ふらりと海へ出た。  二泊目とあって用意していた花火も使い切り、無計画な段取りに暇を持て余していたのだった。
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