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肝試しなら、キャンプ地で――そういや、そんなこといわれたな、と秋になって思い起こすことになった。
四日間休日が続くことになって、持て余した暇を解消してやると今度はキャンプに誘われたのだった。
意外と遠くなかったなと、車から降りて手足を伸ばしてのんきにあくびをしたものの、目的地は駐車場から荷物を抱えてさらに十五分ほど歩いて辿り着いた自然しかない奥地だった。
なにもかもがそろったグランピングなら楽できたのに、テントを張って火をおこすという本格的なアウトドアに、到着早々根を上げた。
非日常を楽しむはずが、慣れない作業にストレスを抱える。
ここにいても役に立ちそうにはないので「釣りで貢献するわ」と、誰かが用意していた釣り竿を持って、二十メートルと離れていない河原へ出向いた。
近ごろ雨も降ってないので穏やかな川の流れだ。
水遊びができそうな程度の深さで、澄んだ川底まで見える。
水流はきれいだけど胃袋を満たせる魚が生息しているかは微妙なところだ。
ビールのつまみにと持ってきたスルメを餌にしてみたが、釣れそうにない。
近くで網とバケツを持ったびしょ濡れの少年たちも成果はなさそうであった。
ポイントを変えてみるか。
上流へ向かって歩き始めた。
不揃いな石がゴロゴロと転がっていて足場は悪い。
対岸は草木が生い茂り、枝が低く垂れ込めていて水面にまで届きそうになっている。
あの際の辺りだったら魚が潜んでいそうだが、歩く道さえもなさそうだ。
川の中を渡ってまで魚を捕りたいと思わないし――あれ?
向こうの岸際に人影がある。
腰まで川に浸かった様子が、垂れ込めた枝葉から見え隠れしている。
魚を狙っているようにじっと水面を見つめているが、なにも道具を持たずに立ち尽くしているのが奇妙にも思えた。
子供、だろうか?
さほど広くない川幅だ。
こちらから見ても体の小さな子供に見える。
泳ぎが達者だとしても、ライフジャケットや浮きも付けずにあんなところにひとりでいては危険だった。
そのとき、風が吹いて枝が揺れたかと思うと人影が消えてなくなった。
川に流されたのか水面に助けを求める手のひらが見えたように感じ、とっさに川へ飛び込んでいた。
泳ぐまでもない。腰ぐらいの深さしかなく、もがくようにして歩いて対岸まで進んだ。
こちらの方は想像してたよりも深く、垂れ込めた枝をつかんでいなければ流されそうだった。
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