第14話 水辺の男の子

6/8
前へ
/103ページ
次へ
 子供の姿を探すが見当たらない。  川下の方へ流されてしまったのだろうか。  姿を探していると、ふと、目の前に男の子が現れた。  腰から上が水面に浮かんでいて、自分よりも背が高いのかと誤認してしまう。  目が合うと、どこかで出会ったような既視感に襲われた。  あの男の子だ。  海水浴場で見かけた、水色のパーカーを着た男の子。 「こんなところでなにしてるの?」  とぼけた質問だが、ほかに聞きようもなかった。 「わかんない」  あのときと同じ答え。 「もしかして、オレに用があるのかな?」 「わかんない」  男の子にもわからないことが、隆邦にもわかるわけがなかった。  だが、自分の目の前にしか現れないのはなにか意味があるのではないかと思わずにはいられなかった。  既視感があるのも、もっとそれ以前にどこかで知り合っていたからではないか。 「おーい。大丈夫かー!」  向こう岸から隆邦を呼ぶ声が聞こえた。 「問題ない! すぐ戻る!」 「そこまでして魚捕まえなくてもいいよ!」  どうやら勘違いをされている。  男の子が溺れたと思ったからなにも考えずに飛び込んでしまっただけだった。  けれども、当の男の子はいなくなっていた。  ――オレに、取り憑いているのかな。  地縛霊とは聞いたことがあるが、それはその土地に執着した霊のことだろう。  海水浴場にいた幽霊が山の中のキャンプ場に出現したのはどういうことか。  少年はまるで隆邦に取り憑いたように出現する。  自分と関わりのあった少年だろうか。  まったく思い出せない。  関わりが一切見いだせないのに、どういうわけか少年と会ったことがあるような気がしてならない。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加