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『2011年へようこそ』
どういうことだろう。
今は2021年だ。
2011年へようこそということは、今から十年前に開封される予定だった手紙ということになる。
2001年に手紙が書かれたが、その十年後、江東芽衣子宛のこの手紙が回収されることなくずっとここに保管されたままだったのだ。
さらに読み進める。
『あなたを無視していたことが一番の思い出です。楽しい時間をありがとう。』
血の気が引いた。
久しぶりの感覚だった。
鼓動が耳鳴りのように全身に響いて胸が苦しくなる。
わけがわからない。
なぜこんな手紙が。
もはや恥も外聞もない。
残りの手紙も開封していった。
『いま、この手紙を読んでるってことは、10年後も生きてるってことだね。しぶといなぁ。ちょーめいわく。』
『友達だって勘違いしちゃった?バッカじゃない。たぶん、10年後はあなたのことなんて忘れてる』
『どんなツラしてここにいるの?クラス会長はあなたに押しつけただけだからしゃしゃり出ないでね。いじめられてるくせして皆勤賞とかウザイから』
過去からやってきた江東芽衣子への攻撃が色あせもせず向かってきていた。
4人の悪意が押し寄せて破裂しそうだった。
その誰もが十年後を想像もせずにその時の勢いのままで筆に乗せている。
いくらなんでも十年後には愚かさに気づいていてほしいが、自ら手紙を回収して処分する勇気は持ち合わせていなかったらしい。
そして、江東芽衣子本人もこの手紙を受け取ることもなく、この場に残された。
なにかの折に本人に渡ってしまってはマズイだろうと、紗助は4つの手紙をポケットへねじ込んだ。
こんな思いをするのなら、来なければよかった。
打ちひしがれて、紗助は講堂をあとにした。
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