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私は、外に誰もいないのを確認して、彗君の方を向いた。
「誰もいないみたいだよ。」
私が、そう言うと、彗君は、私の手を、ギュッと握って、一目散に走り出した。
私は、そんな彗君に、手を引かれながら走った。
角とかに来ると、私が確認して、なんとか、靴箱までやってきた。
彗君は、自分で、靴を持っていたし、玄関で待っていたけど、私は、自分の靴箱に行って、靴を履き替えてから、玄関に行った。
「ごめんね。
お待たせ……。」
私が、そう言うと、彗君は、優しい笑みを浮かべ、「いいよ。行こっか。」と言って、また、私の手を握って走り出した。
玄関を出て、正門まで、一気に走り抜けて、正門から出ようとした時、学校の二階の窓から声がした。
「あっ……あそこに、彗がいる!!」
って、ファンの子に見つかってしまったんだ。
私と彗君は、急いで、その場から逃げるように走った。
近くの公園って聞いて、私は、その公園が、丘の上公園って分かっていたし、その公園への近道をしながら走った。
「ねぇ……撮影って……丘の上公園でいいの?」
少し息を切らしながら、間違ってちゃいけないから、念のために聞いてみた。
「そうそう。
丘……なんとか……って名前だったよ。
あっ……やべ。
向こうから、人が来てる!!
そこの電信柱に隠れて!!」
彗君は、そう言って、私の手を引き寄せ、電信柱の後ろに隠れて、私を抱き締めた。
向こうから来る人が通り過ぎて行くまで、私の首筋に、ずっと、彗君の吐息が当たって、私の胸が高鳴った。
ずっと……こんな感じで逃げるの?
絶対に身が持たないよ……。
でも……偽りでも、私は、彗君の恋人……。
大好きな彗君に頼まれたからには……ちゃんと、公園まで送らなきゃだよね……。
私は、そう心の中で呟きながら、彗君の背中に手を回した。
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