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その瞬間、私の脳裏に、ある記憶が、蘇ってきた。
私は、中学の3年間、ずっと、バス通学で、昨年まで、毎日、同じバスに乗っていた瓶底眼鏡をかけた男の子。
話したことはないけど、いつも、必ず、同じバスに乗っていたことを思い出した。
えっ?でも……彗君は、2年前から売れ出して、同じ学校でもなかったはず……。
何で、私を知ってるの?
「俺と菜海が、初めて、会ったのは……俺が中2の時でさぁ……新学期初日で、遅刻しそうで、なんとか間に合って乗ったバスに、菜海がいて……息を切らしてる俺に、自分のペットボトルのお茶をくれたんだよ……。
それ以降は、恥ずかしくて、喋ったこともなかったけど、いつも、菜海に会いたくて、同じバスに乗ってたんだ。
で……たまたま、眼鏡壊れて、街を歩いてて、眼鏡屋に向かってる時に、スカウトされて、今に至るんだけど……。」
彗君は、照れ笑いしながら、そう話してくれた。
ってことは……私と彗君は、ほぼ2年間……ずっと……両思いだった……ってこと?
そんなドラマみたいな話が、まさか、自分の身にも起こるなんて……。
「……じゃあ……あの……2年間……ずっと……私を思ってくれていたの?」
私が、そう聞くと、彗君は、頷いた。
「あぁ。
ストーカーみたいだけど、菜海が降りるバス停に近い学校調べたり、菜海が、時々、あのピアノのある教室でピアノ弾いてるのも、実は、友達が、この学校の娘と付き合ってたこともあって、何度か、菜海の学校に行ったことがあって、知ってたんだ……。
で、高校入ってからは、撮影もあったりで、あんまり、こっちに来れなかったし、久しぶりに、この近くに来て、もし、まだ、菜海が、中学なら、あの学校にいるかな……って思って、ファンに追いかけられたのを利用して、忍び込んだんだ。」
彗君は、そう言って、苦笑いをした。
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