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伏見城攻めの本多忠勝が城を囲むことに専念している状況を聞き、秀頼は腕を組み思案した。
「そうか。伏見の連中は、どこかを攻めよと申しておるのじゃな」
「おお、さすが上様でございます。良くお分かりになっておられます」
誉められた秀頼は、嬉しそうに言う。
「それくらいは分かるわ。
ならば余が説明いたそう。
伏見には兵糧は十分に蓄えられておるであろう。
良くは分からんが少なくとも二~三万の兵が詰めても一・二年ほどは持つであろう。となると兵糧の催促ではない。
兵糧の問題ではないとするとじゃ。
援軍を求めてきたのか? それも違うな。
なぜなら伏見は幸村が造り替えた。ちょっとやそっとでは落ちない」
ここまではいいかと利長を見やる。利長は頷いて先を促す。
「ならばじゃ。
援軍でないとすると、次に困るのは兵の士気であろう。
籠城が長引くと兵が膿んでくると聞く。皮膚の病なども流行ると言うではないか。伏見の面々はそこを心配しているのであろう。違うか?」
「おっしゃる通りで」
「では、兵が膿まぬように、それでいて敵を引きつけておくには、囲みを弱くして適度に城から打って出る機会が欲しいと見た。
今は固く囲まれているという。
囲みを弱くするには、どこか他の城を攻めて目をそちらに向かせればよい。
どうじゃ?」
「お見事でございます。その通りです」
「で、上様はどこを攻めたらよろしいかと?」
その問いに秀頼はにやりと笑った。
「それは分からぬ。余には材料がない」
「これは失礼いたしました」
利長は小姓に地図を持ってこさせ、四人は車座に地図を囲む。
「ふむ、昌幸よ、どこが良いと思うか? 教えてくれ」
「は、まずは攻めやすいところ、これは距離的にも戦力的にもですが……。
となると少し遠いが筒井城ですかな」
「兼続はどうじゃ?」
「そうでござるな。私もそう思いまする」
「利長は?」
「私は筒井城では遠い気がします。
こちらは大阪城からの出兵となるわけですから。
となると岸和田城の浅野殿が動きましょう。危ういのではないでしょうか」
もちろん、昌幸も兼続も岸和田城のことを失念していたわけではない。
岸和田攻めとなれば大きな戦となる。それを避けたゆえの昌幸の意見であった。
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