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ーー流れか。それはどうだかな。関一政は皆より遅れて参陣した。途中で父上と談合しておったかもしれぬ。父上は儂を信頼しておらぬからな。まあ、考えても詮無き事よーー
「そうか。仕方あるまい。では小栗政信。その方に二基を預ける。浅野幸長の北に大筒を据えよ。
大筒は今宵中に据え、明朝撃つ。合図はここから放った後、一斉に砲撃せよ!」
「ははっ」
秀忠は大筒による一斉砲撃を命じた。諸将はそれぞれ大筒を引き陣へ戻っていった。当初の陣よりも、城から見て遠間の新たな陣だ。
○大阪城
「上様。徳川も大筒を据えるようですぞ」
「そうか。備えはしておるのであろう?」
「もちろんで」
「ならばよい。で、どう迎え撃つ?」
天守で秀頼と昌幸は談合していた。利長は明日に備え各陣を見回っている。
「秀忠が用意したのは四十基余り。その内、十ほどは役に立ちませぬわ」
「佐助が近江に行ったと聞いておるぞ。なにやらしたであろうな」
「その通り。大筒に細工を施しております。撃てば大筒そのものが弾けましょう」
「なるほど。それで残りの三十ほどは?」
昌幸は首を振った。三十ほどの大筒は生きているということだ。しかし、昌幸は片方の口角を上げて心配する素振りを見せない。
「まあ。撃てませぬよ。明日になれば分かりましょう」
秀頼はその件についてそれ以上は問わなかった。
「茶臼山の動きを見まするに、明日早くに徳川は動きますな。
そこで、こちらの動きですが……」
昌幸は明日の戦について、秀頼に策を解くのであった。秀頼も昌幸の策を納得して許した。
秀頼は談合が終わり、部屋を出ていく昌幸に、思い出したように告げた。
「そうじゃ。大助だがな。此度の戦で森忠政を討ち取った功は大きい。
大助に有馬の十の村を与えるぞ。元の知行二千石は召し上げるが、所領は五千石ほどになる。上手く治めよと申しておけ」
昌幸は出かかった体を戻し、秀頼に向き直り座りなおした。
「これはありがたいことで。ですが、大助は郎党を抱えておりませなんだ。上手く治められましょうか」
「ふはははっ。雇えばよかろうに。人が揃うまではどこからか人を貸す。早う人を揃えろ」
大助こと真田幸昌は六輝隊の中で一番に所領持ちとなったのだった。それを聞いた片桐且元から二名の者が、当面は幸昌寄騎として幸昌領を見ることになる。
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