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大阪城へやってきた老武将は髪は剃髪され、まさしく入道のようであり、日に焼けて褐色の肌は黒光りしている。
「上様、ただ今戻りましたぞ」
「よく戻って参られた。お元気そうですな」
この老武将、名を島津義弘という。島津家当主・家久の父だ。今は隠居し、惟新斎と名乗っている。
「して、惟新斎殿。首尾はいかがでござったか?」
「上々にござる。なんとか纏めてまいりましたぞ。したが二・三の条件を付けられましたがな」
「ほう、条件とは?」
「まずは和解金ですな。これは銀二千貫、鉄砲五千丁が向こうの出した条件でござる」
「ふむ、して?それを受けてまいられたか?」
惟新斎はにやりと笑う。
「いや、こちらからは目録のみを出しておきました。向こうも本当に和解金など取るつもりはござりませぬ。ただ、国内の手前どもに敵意を持っておる輩への配慮でござる。目録のみで終わりでござるよ」
「なるほど。形だけということだな。そうであれば問題ないな。
で、他の条件とは?」
「これはこちらにも願ったりの事で、我が国との交易を行うよう求めるとの事でございます」
「ははは。確かに願ったりだな」
「そして最後の条件なんですがな……」
惟新際は少し顔を歪めて、幾分言いにくそうであった。一拍おいて、最後の条件を話した。
「実は人の行き来でござる。かの国から幾人か役人をこちらに派遣したいとの事でござる」
その言葉を聞いた秀頼の顔色が曇った。
二人の言っているかの国とは朝鮮のことだ。秀吉時代の侵略で国交が途絶えていたのを島津義弘を派遣し和睦の交渉に当たらせていた。
「ちょっと待たれよ。惟新斎殿。役人が参るとはどういうことか?
もしや、我が国を属国と見なし、そのための役人の派遣なら認めるわけには行かぬ」
秀頼の眼光は鋭い。朝鮮出兵で豊臣率いる日本が負けたわけではない。むしろ朝鮮などは豊臣軍の相手ではなかった。そこに明が介入してきて、兵糧の確保などの問題もあり撤退したのだ。
惟新斎は大仰に首を振った。
「いやいや、かの国にはそのような力はござらぬ」
それでは役人の派遣とはいかなることなのか。秀頼は話の先を促した。
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