2 警視庁

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「おい! ひとり生きてるぞ。救急車を呼べ」 背後で誰か叫んだので、谷口も慌てて駆け寄った。 すると、全身血まみれで他の死体とまったく遜色ないが、その男にはまだ息がある。 だが、時間の問題。 「おい、誰がやった」 谷口は男の肩をつかむと、激しく揺さぶった。 谷口の乱暴な仕草に、 「ちょっ、谷口さん」 部下でもあり相棒でもある三嶋裕二が、焦ったように止めようとするが、谷口は邪険にそれを振り払う。 時間がないのだ。 「誰がやった。言え」 谷口の容赦のない揺さぶりとドスのきいた声に、瀕死の男はうっすらと目をあけた。 そして、 「白い、……狼」 それだけを言って、再びまぶたを閉じた。
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