53人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい! ひとり生きてるぞ。救急車を呼べ」
背後で誰か叫んだので、谷口も慌てて駆け寄った。
すると、全身血まみれで他の死体とまったく遜色ないが、その男にはまだ息がある。
だが、時間の問題。
「おい、誰がやった」
谷口は男の肩をつかむと、激しく揺さぶった。
谷口の乱暴な仕草に、
「ちょっ、谷口さん」
部下でもあり相棒でもある三嶋裕二が、焦ったように止めようとするが、谷口は邪険にそれを振り払う。
時間がないのだ。
「誰がやった。言え」
谷口の容赦のない揺さぶりとドスのきいた声に、瀕死の男はうっすらと目をあけた。
そして、
「白い、……狼」
それだけを言って、再びまぶたを閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!