2 警視庁

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「俺たちは、お前らを根本的に信用してはいない」 篠島は言った。 「んだとお。こちとら刑事だぞ」 谷口は反射で怒鳴り返したが、 「胸に手をあてて考えてみたらどうだ?」 篠島の口角は、皮肉を言うときのように斜めに歪んであがっている。 「ちっ」 谷口は舌打ちした。 篠島が言っているのは、少し前に警視庁を席巻した噂話のことだ。 押収した薬物の一部が姿を消す。 現場で確認した量と、記録として残る薬物の量が違っている。 根も葉もない噂だと、谷口たちは笑い飛ばしたが、現実に公安の査察が入っている。 麻薬取締官が知らない道理がない。
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