2 警視庁

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「待ってくださいよ、谷口さん」 後ろを追ってきた三嶋が、谷口と肩を並べる。 谷口より2歳年下の三嶋は、いつでも谷口をたてて敬語を使う。 「あいつらムカつきますね」 だが三嶋もキャリアだから、いつか谷口を置いて出世していく男だ。 しかしそんなキャリアでも、麻薬取締官に情報を提供しなかった谷口を非難する口ぶりはない。 谷口は、ようやく吸えるタバコを口に咥えると、黙ったまま火をつけた。 「あれ、どういう意味ですか?」 谷口がいつまでも口をつぐんでいるので、三嶋は耐え切れず聞いてきた。 瀕死の男が最後に口にした言葉を、谷口と一緒に耳にしていたのだ。 「あぁ?」 谷口は目を上げる。 吐き捨てるように言った。 「くだらねぇ伝説が、現実になりやがったんだよ」
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