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警視庁の組対部本部に帰って、谷口はホワイトボードに『宇田川組』と書いた。
そこから矢印を伸ばして『狼』と書く。
「狼?」
尋ねる三嶋に、タバコのフィルターを噛み潰しながら谷口は答える。
「白い狼とあだ名される殺し屋だ。ここ二年ほどで、知名度をあげてきた」
エリートにこんなヨタ話を聞かせていいものか、少し悩む。
それから、平行線上にまた矢印を伸ばして『?』マークを書いた。
「国籍も不明。正体も知れねー幽霊みてーなヤツだ。狙った獲物は必ず食い殺す殺し屋。百発百中なんだとよ」
気に食わないと、タバコを灰皿に戻す。
「俺たちゃ、いつからお伽噺の住人になった。こんなふざけた野郎の相手なんかしてられっか!」
苛立ちに任せて、目の前にあった机を蹴り飛ばした。
灰皿がタップダンスのように揺れて、吸殻が周囲に飛び散る。
「ちくしょう」
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