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優しい木漏れ日が辺りを照らす。
ああ、また来てしまった。この別れが。
私は手に持つ本の背表紙を親指で撫でた。
今ばかりは優しい光も鬱陶しい。
私は電車を待つ彼の背中に問いかける。
「また、行ってしまうの?」
「…」
彼は線路の先を見つめる。
ぶっきらぼうなその口が、その鋭い三白眼が、しばらくは見れなくなる。
私は静かに本を閉じ、鞄にしまう。
「お願いッ……行かないで」
「何度も言わせるな」
「お願い……」
彼の背中にソッと抱きつく。
「あのな、毎回毎回大袈裟なんだよ」
彼も寂しさのあまりに震えだす。
私はそんな彼の背中を優しく撫でた。
「大袈裟じゃないよ……」
彼は赤くほほを染めながら私に言い放つ。
「友達とプールに出かけるだけでこんな大袈裟にすることないだろ一日だぞ!?一日!!お前は妹らしく大人しく家で待ってろ!じゃあな!」
彼はそう言い残すと電車に飛び乗った。
颯爽としたその姿に私はほうっとため息を吐く。
「もう、照れ屋さんなんだから…」
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