第1章

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優しい木漏れ日が辺りを照らす。 ああ、また来てしまった。この別れが。 私は手に持つ本の背表紙を親指で撫でた。 今ばかりは優しい光も鬱陶しい。 私は電車を待つ彼の背中に問いかける。 「また、行ってしまうの?」 「…」 彼は線路の先を見つめる。 ぶっきらぼうなその口が、その鋭い三白眼が、しばらくは見れなくなる。 私は静かに本を閉じ、鞄にしまう。 「お願いッ……行かないで」 「何度も言わせるな」 「お願い……」 彼の背中にソッと抱きつく。 「あのな、毎回毎回大袈裟なんだよ」 彼も寂しさのあまりに震えだす。 私はそんな彼の背中を優しく撫でた。 「大袈裟じゃないよ……」 彼は赤くほほを染めながら私に言い放つ。 「友達とプールに出かけるだけでこんな大袈裟にすることないだろ一日だぞ!?一日!!お前は妹らしく大人しく家で待ってろ!じゃあな!」 彼はそう言い残すと電車に飛び乗った。 颯爽としたその姿に私はほうっとため息を吐く。 「もう、照れ屋さんなんだから…」
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