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夢を見る。
電車に揺られて本を読んでる。
そしたら誰かがこう言うの。
『今日は何を読んでいるんですか?』
男の人の声。
その声は優しそう。
『今日はこれ』
私はひょいと持ち上げて本の表紙を見せる。
『これ、面白いんですよね。僕も読みました』
『まだ半分しか読んでないから言っちゃダメだよ』
顔も、名前さえ知らないその人と私は毎晩夢で会う。会って楽しそうに話すの。
ずっと昔から知ってるみたいに。
『今日で君とはさよならだ』
『・・・どうして?さよならは嫌だよ』
『大丈夫。寂しくないよ。大丈夫だから』
30回目の夢の中、私とあなたはさよならをした。
その夢から覚めたのは通学途中の電車の中。
いつもは電車では見ないのに。
『ドアが閉まります』
人が流れ込んでくる。
そしてあなたは隣に座った。
「その本、面白いんですよね。僕も読みました」
聞き覚えのある優しい声が私の心を静かにさらった。
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