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「…はぁ」
放課後、俺は1人保健室の外に座って、ため息をついた。
隣には、相変わらず緑のカーテンとして育てられているヘチマが、これでもかというくらいに緑色を反射していた。
今は夏。
声をかけたられたのも、ちょうどこんな時期。
「…はぁ」
確かに、俺が小学4年生の時にいた人だ。
俺が高校生になるまでここにいる、なんて思う方がおかしい。
…でも、俺は会えると思ったんだ。
ここの高校説明会に来て、このヘチマを見てそう思ったんだ。
「…はぁ」
一際自己主張の激しい大きなヘチマを見た。
なんとなく、光の当たりようでキラキラしていた。
…あの人も、なんか笑顔が輝いていたな…
「…はぁ」
もう1度でいいから、会いたいな…
あの人に…
「そんなに興味ある?ヘチマ」
すると。
「…え?」
あの時と同じ声がした。
「あ…貴女はっ!」
「え?…まさか、覚えててくれたの?」
そこに立っていたのは、紛れもなく、俺が想い焦がれていた、その人だった。
「あ、貴女こそ、俺のこと覚えててくれたんですか?!」
「えぇ。だって、そんなにヘチマに興味を持って見てた子、私初めて見たから」
そう言って、あの時と同じ笑顔を俺に向けてくれた。
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