冬子ちゃん

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「……」 「お願い。 帰らせて。 今から教室に来る子なんていないもん。 私が帰って来なかったら、お母さんが心配して探しに来るから」 気配のする方に向かって、一生懸命に話しかけた。 「私もそういったのに帰らせてくれなかった。 ダメだよ。 誰かと交代するまで帰してあげない」 怒らせたら殺されるかもしれない。 すぐにお母さんが気付いて先生と一緒にやってくるはず。 それまで、我慢しよう。 私は見えない相手と話し始めた。 「あなたは誰? いつから、ここにいるの?」 「私は冬子。 ずっといたよ。 みんなと話せるようになったのは今日からだけど。 やっと友達が出来た」 友達じゃない。 という言葉を飲み込んだ。 今だけ冬子ちゃんの友達でいよう。 「冬子ちゃんの話を聞かせて」 私が頼むと、冬子ちゃんはこの教室でいじめられ、ここで自ら命を絶った話を語り始めた。 冬子ちゃんは、この教室で命を絶ってから、ずっとここから離れられなかったのだ。
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