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教室の戸を開けたら、そこには学級委員の紗季がいた。
俺が廊下にいて、教室に入ろうとしたら紗季がいた、ならまだベタなのだが、俺は今、教室から出ようとしていたのだ。
そう、俺は教室から出ようとしたのだ。
そして、紗季は今まさに教室に入ろうとしていたのだった。
「あれ……正樹くん」
「いいんちょーじゃん。忘れ物?珍しい」
「え?貴方に呼び出されたのよ?」
「……は?」
呼び出したつもりは全くない。そもそも呼び出して約束の相手が来ないままに帰るのは不躾すぎると言うものだ。
「呼び出してないけど」
「でもほら」
と言って紗季は紙ぺらを取り出す。律儀にファイルに仕舞われている。
《今日の17時に教室で待ってる。
二色正樹》
「俺の字じゃないな……」
「そ、そうなの?」
「それに俺がハートの便箋とか無いな」
そう、それはハートの便箋に書かれていた。そんなファンシーなものより、紙の裏とか、ルーズリーフとかに書くことが多い。
「それに、どっちかって言うとさ……」
「ど、どっちかって言うと?」
「いいんちょーの字じゃね?」
「……え?そ、そんなこと、な、ないよ!?」
動揺しだした。これは当たりな気がする。
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