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「ノエルのボディが、少年と同じで、子供の心臓が必要。子供の心臓は、激しい順番待ちで、俺では割り込めない。待っていたら、三年どころか十年でも無理だ」
かつてミラレスには、様々な臓器の在庫があった。
「ミラレスのならば…ある場所がある…」
エイタの育った場所。そこに、保存された遺体があった。多分、政宗しか知らない事であった。
「やるか」
兄弟は意見が一致したのだが、ノエルに今のままでいいと拒否されてしまった。昆虫の博士のせいか、自然のままで生きていたいのだそうだ。
第十四章 夏草に埋もれて
政宗がオウランドに帰ると言うと、時宗が、ノエルが一人で可哀想だと訴えた。
「で、ポーラの許可を取ったと…」
茶屋町に、政宗は正座させられていた。
「はい」
虎森に、ノエルと上原までもが増えていた。上原は、ユカラに用事があるそうで、又、ユカラにも、トーリックの研究所があるのだそうだ。
コクピットで正座させられ、政宗は茶屋町に怒られていた。
「この前は、孤児を引き取る、でしたね?」
茶屋町が笑うと、余計に怖い。確かに、人数が増えている。でも、減っているよりもいいだろうと言おうとして、茶屋町に睨まれていた。
「今度は成人男性だよ。扶養家族ではないよ…」
言い訳は火に油であった。政宗は、すぐに厄介事を増やす。上原はともかく、ノエルは地球人で、ポーラに自分の研究所を持っている。ポーラの許可を取ったと言っても、大量の条件が付いていた。事故や病気にでもなったら、国同士の訴訟に発展しかねない。それは、個人の問題ではなかった。
どう考えても、ノエルはポーラに帰した方がいい。
「大丈夫だよ。体の容体が落ち着いたら帰るよ」
ノエルが寂しく笑い、時宗は茶屋町をポカポカと殴った。
「病人を苛めたらダメだよ」
「はいはい」
ノエルに帰る気があるのならば、まだいいと、茶屋町は操縦席に座った。
ノエルは砂漠にある、王ランドの中に住み始めたのだが、元気が無いわりには、行動は早かった。
「政宗。砂漠に花を咲かせようと思う」
昆虫に種子を乗せ、放つ。虫はやがて死に、死骸から植物が育つ。植物を食べ、虫が育つ。
「結構、オレンジも好きなんだけど…」
政宗の言うことなど無視され、ノエルは砂漠の緑化を行っていた。
「夏草に埋もれて死にたいよ。で、俺の死体は虫と草になるわけよ」
「死なせるかよ…」
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