第九章 scar

20/30
前へ
/378ページ
次へ
「おいしい」  そこで、やっと会話ができるようになった。 上原は、ミラレスでの記憶を全く持っていなかった。 しかし、政宗を見た瞬間に、 忘れていると強烈に感じたという。 「思い出したい…」 「俺もミラレス出身だけど、 思い出してもいいことなんてないよ。 忘れていなよ」  政宗が余ったごはんで、おにぎりを作っていると、 少女は姉に持ってゆくと言って、走って行った。 「そう思っていましたが、 俺、忘れているのですよね…」  上原の手が、政宗の服の中に入り、 背を撫ぜていた。 兄弟だと叫びたいが、政宗はぐっとこらえて、 上原の手を引っ張り出した。
/378ページ

最初のコメントを投稿しよう!

111人が本棚に入れています
本棚に追加