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あまり見ていては失礼だろう。
そう我に返り、慌てて顔を本に戻す。横顔でも綺麗な人だと思った。漫画から抜け出したような人。そんな印象を受けた。
**山の頂上付近にある、古びた図書館に先ほどまでいた。
さすがに徒歩でこの山を下山する勇気はない。なので、いつもバスを使って下山している。
毎週水曜日、図書館に来ること以外、**山には来ない。大半は一人だけ、バス停のベンチに座っている。
こうやって隣に人がいるのは二度目だ。鞄を前で抱きかかえつつ、私は何度か隣の少年を見ていた。
彼は特に何をするというわけでもなく、ただまっすぐにバス停から見える景色を見ているように見えた。彼の目にはこの平凡な風景が何に見えているというのだろう。
試しに私も見てみる。
ところどころ塗装がはげ落ちた白いガードレール、灰色のアスファルト、雨に打たれつつも青々とした葉、雨に濡れて茶色くなった土。そして、木々の間から見える、私が暮らしている街__どれもこれも、いつも通りの風景だ。意識的に呼吸をすれば、季節の匂いがする。
雨が屋根にたたきつけられる中、外の景色をそう評価したときだった。
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