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「ひゃっ……!」
不意に首筋に何か辺り、思わず声を上げる。隣の少年も少し驚いたようにこちらを見た。
一気に顔が赤くなる。
羞恥心が頭の中を支配し、回る。今の声は私の物ではないと自己暗示をかけるが、この女子独特の高い声は少年には出せない。
隣からクスッと小さく笑う声が聞こえた。
恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い、思わず俯く。この声の主が私だと認めているようなものだ。今ならこの大雨の中、駆け出して下山できるに違いない。
そのまま、沈黙が流れる。彼は冷静に一言、こう呟いた。
「雨漏り、ですね」
「……そっ、そうですね」
上ずった声で私は頷く。
しばらくの沈黙。私はバスが後何分で来るか、と時刻表を見た。思わぬハプニングに一刻も早くここを立ち去りたくなったのだ。あと十分。ああ、どれだけ長いんだろう。
「大丈夫ですか?」
しかも見ず知らずの彼に心配されるという始末。本当になんて最悪な日だろうか。
「だ、大丈夫です……」
気が動転しすぎて、またも声が上ずる。そのことにまたも恥ずかしくなる。人のよさそうな笑みがこちらに向けられる。顔が先ほどよりも赤くなった。男子とのかかわり方が分からないからだろう。
そのまま、また沈黙。
今の私にとって、辛すぎるものだった。息を何度か吸って吐いて、思い切って声をかけた。
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