ラブレター

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「ひゃっ……!」  不意に首筋に何か辺り、思わず声を上げる。隣の少年も少し驚いたようにこちらを見た。  一気に顔が赤くなる。  羞恥心が頭の中を支配し、回る。今の声は私の物ではないと自己暗示をかけるが、この女子独特の高い声は少年には出せない。  隣からクスッと小さく笑う声が聞こえた。  恥ずかしさのあまり両手で顔を覆い、思わず俯く。この声の主が私だと認めているようなものだ。今ならこの大雨の中、駆け出して下山できるに違いない。  そのまま、沈黙が流れる。彼は冷静に一言、こう呟いた。 「雨漏り、ですね」 「……そっ、そうですね」  上ずった声で私は頷く。  しばらくの沈黙。私はバスが後何分で来るか、と時刻表を見た。思わぬハプニングに一刻も早くここを立ち去りたくなったのだ。あと十分。ああ、どれだけ長いんだろう。 「大丈夫ですか?」  しかも見ず知らずの彼に心配されるという始末。本当になんて最悪な日だろうか。 「だ、大丈夫です……」  気が動転しすぎて、またも声が上ずる。そのことにまたも恥ずかしくなる。人のよさそうな笑みがこちらに向けられる。顔が先ほどよりも赤くなった。男子とのかかわり方が分からないからだろう。  そのまま、また沈黙。  今の私にとって、辛すぎるものだった。息を何度か吸って吐いて、思い切って声をかけた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加