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「あ、あの、ここへ何しに?」
「へ?」急な話題に、彼は少し驚いたようだった。「ええ、と。図書館からの帰りですよ」
だとすると姿を見かけていてもおかしくはないのだが。なにせ、長身でマフラー姿はよく目立つ。
「わ、私も同じです」
だから何だというのだ。
思わず、自分で突っ込む。こういうときに誰かと持って喋っておけばよかった、と静かに後悔するのだ。
「何の本、借りたんですか?」
意外にも彼は話に乗って来た。私はいつも借りている作者の本を上げ、その外科印を借りに来たのだがそれがなかったという話をした。聞いたところ去年の冬辺りから無いのだという。
「なるほど」ふむ、と彼は考えたようだった。「今度行ったら、僕も探してみますね」
「あ、ありがとうございます」
こんなバカな話題にも付き合ってくれる優しさに感謝しつつ、壁時計を見た。
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