9人が本棚に入れています
本棚に追加
今年5年生になったばかりのHさんのクラスでは、恐い話が大流行している。
自分が体験した話、友達が体験した話、親から聞いた話、親戚の誰かの話、友達のお兄さんのその友達が聞いた話、等々、出所がもはや誰だか分からない話まで大繁盛だ。
今朝もHさんが教室に入ると、仲のいい友人数人が机の前までやってきた。
「ねえねえHちゃん、『お化けテレビ』って知ってる?」
「おはよう、Kちゃん。『お化けテレビ』? 何それ?」
「ほら、やっぱりHちゃんも知らないって! ウソなんじゃないの?」
ランドセルをロッカーにしまっているHさんの後ろで、特に仲の良かったKさんが誰かに話しかけている。
「ウソじゃないって! いろんなところでウワサになってるし、2組の友達も知ってたもん」
「何なに? 『お化けテレビ』? あ、オレも知ってる!」
「ほらぁ、知ってる人いるじゃん!」
話だけを聞いていると、けっこう広まっている話らしい。
「あたし、知らない。どんな話なの、『お化けテレビ』って?」
Hさんがくわしい内容を聞こうとした時、チャイムの音が響いた。
「あ、先生が来ちゃう。また後でね」
机の周りにいた友達が、それぞれの席に戻っていく。
(ま、いいか)
Hさんも深くは考えずに席に座り、先生が教室に入って来るのを待った。
◇ ◇ ◇
給食が終わり、昼休み前の清掃を進めながらHさんはKさんたち仲良しグループと一緒になって何をして遊ぼうかと話していた。
「そう言えば、Kちゃん。朝の話なんだけどさ」
「朝の話?」
「うん、ほら、『お化けテレビ』の話。あたし、よく知らないんだよね。教えてくれない?」
そうじロッカーにホウキをしまいながら、Hさんはみんなの顔を見回した。
「いいよー」
Kさんも手にしていた黒板ふきを元の場所に戻しながら、Hさんに返事をする。
「何それ、私も聞きたい」
「あ、私もその話、知ってるー」
朝のやり取りを知っている子も知らない子も、ワイワイと騒ぎだした。
「ぞうきん洗ってくるから、ちょっと待ってて」
友人達がそうじ道具をしまい終わるのを待って、Kさんは自分の席に座って話を始めた。
周りにいた友人達も手近な席に腰を下ろす。
「朝も言ったけど、2組の子に聞いた話ね」
と前置きをして、Kちゃんは話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!