テレビ

2/11
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
今年5年生になったばかりのHさんのクラスでは、恐い話が大流行している。 自分が体験した話、友達が体験した話、親から聞いた話、親戚の誰かの話、友達のお兄さんのその友達が聞いた話、等々、出所がもはや誰だか分からない話まで大繁盛だ。 今朝もHさんが教室に入ると、仲のいい友人数人が机の前までやってきた。 「ねえねえHちゃん、『お化けテレビ』って知ってる?」 「おはよう、Kちゃん。『お化けテレビ』? 何それ?」 「ほら、やっぱりHちゃんも知らないって! ウソなんじゃないの?」 ランドセルをロッカーにしまっているHさんの後ろで、特に仲の良かったKさんが誰かに話しかけている。 「ウソじゃないって! いろんなところでウワサになってるし、2組の友達も知ってたもん」 「何なに? 『お化けテレビ』? あ、オレも知ってる!」 「ほらぁ、知ってる人いるじゃん!」 話だけを聞いていると、けっこう広まっている話らしい。 「あたし、知らない。どんな話なの、『お化けテレビ』って?」 Hさんがくわしい内容を聞こうとした時、チャイムの音が響いた。 「あ、先生が来ちゃう。また後でね」 机の周りにいた友達が、それぞれの席に戻っていく。 (ま、いいか) Hさんも深くは考えずに席に座り、先生が教室に入って来るのを待った。 ◇ ◇ ◇ 給食が終わり、昼休み前の清掃を進めながらHさんはKさんたち仲良しグループと一緒になって何をして遊ぼうかと話していた。 「そう言えば、Kちゃん。朝の話なんだけどさ」 「朝の話?」 「うん、ほら、『お化けテレビ』の話。あたし、よく知らないんだよね。教えてくれない?」 そうじロッカーにホウキをしまいながら、Hさんはみんなの顔を見回した。 「いいよー」 Kさんも手にしていた黒板ふきを元の場所に戻しながら、Hさんに返事をする。 「何それ、私も聞きたい」 「あ、私もその話、知ってるー」 朝のやり取りを知っている子も知らない子も、ワイワイと騒ぎだした。 「ぞうきん洗ってくるから、ちょっと待ってて」 友人達がそうじ道具をしまい終わるのを待って、Kさんは自分の席に座って話を始めた。 周りにいた友人達も手近な席に腰を下ろす。 「朝も言ったけど、2組の子に聞いた話ね」 と前置きをして、Kちゃんは話し始めた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!