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中学生の相田君に聞いた話。 相田君の通っていた小学校は、林間学校でS県にある市営の学習施設を使っていた。 だがその年は施設の老朽化に伴う建て替え工事のため、例年とは違う施設で林間学校を行うことになったんだそうだ。 4年生だった相田君は、事前教育のために廊下などに貼り出された施設の写真を見て、どんな場所だろうと夏休みを楽しみにしていた。 林間学校用の行動班も決まり、各自が何を持ってくるのか担当も決まった。 自炊で作るカレーも調理実習で上手く作る事が出来た。 荷物も揃え、あとは当日を待つのみ。 まるで初めての遠足の時のように、前日は久しぶりに興奮して眠れなかった。 いつもは何度も起こされてからようやく布団から抜け出す相田君も、この日ばかりは目覚まし時計が鳴り出す前に自分で飛び起きる。 キッチンではお母さんが、お昼に食べるためのお弁当を包んでくれていた。 「おはよう!」 「おはよう、今日は早いのね。いつもこれだけ早く起きてくれたら助かるのに」 お母さんがチクリと皮肉を言うが、そんなものは気にならない。 用意してもらった朝食をかきこみ、何度もチェックしたリュックの中にお弁当を突っ込む。水筒を首から下げ、着替えなどのつまったバッグを持てば準備完了。 「行ってきます!」 相田君は玄関で手を振るお母さんに声をかけると、元気に学校へ向かって歩きだした。 途中で同じ班の友人と合流し、相田君のテンションは嫌でも上っていく。 校庭で校長先生の話を聞き、担任の先生から林間学校での注意事項の説明が終わると、それぞれのクラスに割り振られたバスに乗り込む。 水筒をリュックから出していると、後ろの席にいる仲のいい藤田君が声をかけてきた。 「なあ、知ってる? これから行くG会館って、出るんで有名なんだって」 「出るって何が?」 「何がって、馬鹿だな、コレだよ、コレ」 藤田君は体の前で両手をダランと垂らすと、口からベーっと舌を出して見せた。 「えー、何なに? オバケ出んの、あそこ?」 好奇心旺盛な小学生の事、たちまちバスの中の話題は「オバケの怖い話」でもちきりになってしまう。 「ほら、ちゃんと席に付けー! ガイドさんの説明が聞こえないだろ!」 とうとう担任の先生が声を張り上げて注意するほどに。 先生に怒られて、いったんは首をすくめて黙ったものの、じっとしている事など出来ないのがこの学年の特長だ。
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