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「なあなあ、夜になったら怖い話大会しようぜ」 「なんで、わざわざ『出る』って噂のある場所でそんな事するんだよ?」 「そういう噂があるから、面白いんじゃんか」 「ちょっと男子、やめてよねー」 「なんだよ、お前、オバケ怖いわけ?」 ガイドさんの話が始まっても、隣の席や前後の席で盛り上がる。 結局その話は「先生ー、気持ち悪いって言ってる子がいます!」との声があがるまで続けられた。 ◆◆◆ 少々のトラブル(気持ち悪くなる子が出たり、トイレ休憩でなかなか戻って来ない子がいたり)はあったものの、予定時間をほんのわずかオーバーしただけで、バスは目的地のG会館に到着した。 施設は比較的新しく、食堂や入浴施設をかねた会館の奥には、生徒達が寝泊まりする為のバンガローが林立している。その向こうに見えるのは、湖だ。水面を渡って来る風はヒンヤリとして心地よく、ちょっと肌寒いくらい。 荷物を抱えて食堂に移動し、それぞれが持ってきたお弁当に舌鼓を打つ。 「なあ、この後って遊覧船に乗るんだよな?」 「俺、遊覧船って初めてなんだよ」 話題は当然、昼食の次に予定されている遊覧船での湖周遊のことになる。 テーブルごとにお弁当のゴミを集めて片付けをし、先生が食堂の時計を指さして「集合時間を厳守!」と声をかけたのを合図に、生徒達は大きなバッグを持ってあらかじめ指定されていたバンガローへ移動を始めた。 湖の桟橋に停泊している遊覧船は2隻。白地に黄色で大きなヒマワリが描かれているものと、黒の海賊船を模したもの。 この学年は4クラスあったので、奇数クラスは白い遊覧船、偶数クラスは黒い海賊船に乗り込むことになった。 1組の相田君は白い遊覧船。 「あーあ、あっちの海賊船の方が良かったな」 並んで遊覧船に乗り込む時、後ろの方で誰かが呟くのが聞こえたが。それは相田君も同じ思いだ。 「でもさー、こっちからだとすれ違う時に海賊船をじっくり見れるじゃん。海賊に襲われる乗客の気持ちが分かるかもよ?」 ああ、なるほど。そういう考え方もあるのか。 誰か分らないそんな会話を聞きながら、相田君はニヤリとした。 2隻の遊覧船は桟橋を反対の方向へと出発する。湖をグルリと半周して、桟橋の反対側ですれ違う予定になっている。 相田君は湖の由来や周辺の観光名所を案内するアナウンスの録音を聞きながら、デッキに出て友人達と湖を見ていた。
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